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2012/6/27 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment

クラウドというのがいまいち気に入らないんですよ。まぁ全面的に否定するわけじゃないんですけど、個人的には気に入らない思想で作られたクラウドってのが結構あるような気がするんです。

クラウドって、何らかの情報資源をネットワークの向こうに置いておいて、適宜利用する、っていうコンセプトですよね。もちろん、必要なときに時々アクセスするだけです、っていうのなら、たいした問題じゃないんですよ。ローカルで使うツールの一部がクラウドによって強化される、っての、つまりハイブリッド型は悪くないんです。

困るのは、なんというか、ツールそのものがクラウドってタイプ。ピュアクラウド。たとえば、スマホのアプリを立ち上げると、いきなりネットワークにアクセスして必要な情報をゲットしたりするタイプ。もちろん、その時点でネットワーク接続に失敗すると「アプリの起動に失敗しました」ってなるやつ。単純にストリーミング動画サービスも、ネットワークにアクセスできないと何もできないですよね。これもある意味でピュアクラウド的サービスだと思います。

さらには、そもそもアプリの実体はローカルには無くて、ローカルにあるアプリっぽいものは、単なるブラウザエリアだったり画像表示器だったりするタイプもこれ。インターフェースそのものをクラウド側で生成していてローカルには一切インターフェースが無いようなの。シンクライアント的な感じ。

別にこういうサービスやアプリがあることを否定するつもりはないんですけど、ちょっと気に入らないのは、ケータイキャリアたちが、こういうタイプのサービスをこぞって始めていることです。ドコモなんてひどいもんで、「ネットワークの土管化を避けるために、ネットワーククラウドを本質的な付加価値にしていく」とか言い出している始末。

まずそもそも、どうしてクラウド的サービスが個人的に気に入らないのか、ってことなんですが、答えは簡単です。ネットワークがないと使えない。今、日本で一番広いエリアで使えるであろうネットワーク手段は、携帯・PHSによるインターネット接続です。ところが、これらでさえ、圏外という場所は多分に残っています。

そして、インフラオタク的に言わせていただければ、根本的にすべてのエリアを完全にカバーするインフラというのは作れない、と思っている部分もあるんです。たとえば、イリジウムみたいに全地球をカバーできるシステムもありますが、あれだって、地下では絶対に使えません。地下どころかビルの谷間でさえ使えないこともあるくらい。単に距離的・面積的な問題で置けないことよりも、そういった些細な理由での「カバー不可」というのが、通信インフラでは根本的に残らざるを得ない、というのが私の持論です。

というのは、結局は通信インフラってのは、維持コストと収益のバランス。維持コストが無限に使えるならありとあらゆる場所を完璧にカバーできるでしょうが、収益、採算性によるキャップがかかってしまうというのが、営利企業であることの限界。狭くて人口密度の高い島国ならあるいは、と思わないでもないですが、それにしても、シンガポールならまだしも山地の多いこの国での完全カバーは厳しいでしょう。

というか、最近特に気になっているのは、東京の地下。地下鉄。駅間カバーは徐々に進んでいるとはいえ、それでもまだ一部分にすぎないし、そもそも、最近は混雑でつながらない、実質圏外。実質圏外どころか、実際に圏外表示出ますからね、ドコモの場合。ホームで電車待ち中にブラウザでリンクたどってると突然圏外表示になって、15分ほど帰ってこない。ホームで圏外表示になったらいつも電源入れ直ししてます。なんですかあれ。何が起こってるのかは大体想像はつくけど、なんですか、あれ。改善する気ゼロですか。

という様に、東京の地下には広大な「圏外エリア」が広がっています。これは一例で、土管=インフラというのは、完璧無欠ということはありえない、と私は考えるわけです。だから、少なくとも端末単位で動くようなサービスは、ネットワークが無くても動くような工夫をすべきということなんですよ。キャリア諸氏が傲慢にも「我々の土管は完璧だ」と、土管ありきのサービスをやることはとりあえず気に入らないし、それ以外のサービスプロバイダに関しては、土管なんぞあって当然、圏外の奴は死ねみたいな考え方が気に入らん。

いや本当、クラウド的に、全部の処理をサーバ側でやっちゃう、っていう概念は確かにいろんな便利な面があることは重々承知してるんですけど、個人が端末単位で使うサービスだったら、ローカルでもある程度動く仕組みを備えてほしいんです。もちろんそういう努力をしたアプリケーションも結構ありますけど、最近は本当に多いんですよ。地下鉄でアプリ立ち上げたら「ネットワークが見つかりません。アプリを終了します」。アプリの価値が赤の他人が作っているネットワークインフラに完全に依存してしまうことを、ちょっとくらい恥ずかしいとか思わないのか、と。いっそ、アプリがネットワークを利用する分の通信料をアプリ提供者に課金するっていう仕組みがあればいいのに。あれっ、これいいアイデアだ。マルウェアとかも激減するよね。よし特(以下5kB程中略)

ってことで、クラウドサービスっていうのが、ネットワークとは切っても切れないサービスで一方ネットワークというのは完璧ってことはありえないものっていう前提でサービスを設計するなら、せめてスマホ向けサービスとかはクラウドとローカルのハイブリッドで考えてほしいよなぁ、と思うお話でした。誰とは言わないけどネットワーククラウドが主力!とか言ってるキャリア殿にはしっかり考えていただきたいところです。でわ。

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2012/6/27 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment
2012/5/31 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 4 comments

だいぶ前に、地下鉄駅構内でドコモの携帯電話がほとんど使い物にならない、という話を書きましたが、最近は、auの方も結構ダメダメになってきました。スマホなのでパケットにつながってるのかつながってないのか辺りが少し不明瞭なのですが、通信状態を表す矢印を見ていると、上り方向は点滅するけど下り方向が全く点灯しない、という感じ。これはあくまで上位プロトコルから見た状態なので、おそらく、無線がちゃんとつながってなくて、上位から見ればデータを送ったつもりなんだけど、たぶん下位プロトコルのところで完全に滞留している(無線がつながってないので)、という感じだと思われます。

さて、この話を以前にも書いた時、ほかの地上のターミナル駅でも結構ひどいよ、というお話もいただいたり、あるいは、「地下だからしょうがないじゃん」的なコメントもいただいたりしたのですが、よく御存じの方から見れば「地下だからしょうがない」というのは至極当然かと思われますが、今日はそのあたりの話を少し。

私が特に地下鉄駅を取り上げたことには、やっぱり意図があるというか、だからこそ地下鉄駅を、というのがあります。それは、地下という閉鎖性が問題です。

今現在、地下で携帯電話が使えるのは結構当たり前になっていますが、特に地下鉄駅などの公共の地下で携帯電話が使えるようになるのにはいろんな紆余曲折があったりなかったりするわけです。とにかく何を置いても問題になるのが、「基地局をどこに置くのか」です。

確かに普段、地下鉄の駅構内で天井を眺めたりしても、そこかしこに入り口があってあちこちに無駄なスペースもあって、携帯電話の基地局なんてどこに置いたっていいじゃん、と思うこともわからないでもないのですが、一方、地下鉄事業者にも地下鉄事業者なりの言い分があります。すなわち「あれは無駄なスペースなんかじゃない」と。

地下掘るのだってタダじゃないし、出来るだけ効率よく必要な装置・機材を収容できるように作るのは当然の話で、そういう前提であるにも関わらず何か無駄っぽいスペースがあるってことは、それは、たとえば保守・作業用のマージンとして必要欠くべからざるものであったり、あるいは、地下鉄事業者自身が将来的に装置設置のために確保してあるものだったりするわけです。それを赤の他人にホイホイと貸すかというと、それも無理のある話でしょう。

もちろん、スペースに十分な空きがあったとしても赤の他人の装置を置くこと、置くために工事をすること自体、地下鉄事業者にとってはリスクでしかありません。スペースの消費はもとより、そこに重さもわからない装置を置くようなリスクも取れないし、そのための電源や回線を引き回すためにダクトなりなんなりの経路を使わせることは、自社サービスのための配線に対するリスクでもあります。さらには携帯電話基地局は事業法電波法に守られた装置、法的に触ってはいけないケーブルがそこにあることで、自社用のケーブルの工事に制限ができてしまう可能性もあるわけです。そもそも鉄道用の保守スペースとかに他の知らない作業者を立ち入らせる、って時点でかなりハードルが高いわけで、まず第一声は「ヤダ」でしょう。私ならそう言います(笑)。

そんなわけで、携帯電話事業者と地下鉄事業者は話し合いに話し合いを重ね、こうやってスペースを節約してこうやって必要スペースを確保するし、こういう仕組みにすることで作業員の出入りや回線の取り回し作業を最小化するので何とか置かせてください、という様にして、基地局設置を実現しているわけですね。

で、地下鉄事業者などとの交渉の内容はまぁ想像するしかないのですが、一番よく知られているところで言うと、「各社のアンテナを出来るだけ共用化してスペースを節約すること」なんてのがあったりします。基地局本体もかさばりますが、アンテナもかさばる物。それを各社が好き好きにつけたんじゃぁたまらないから、多バンド対応のアンテナを共用で使う様にしなさい、なんていう形になっていることが多いようです。

一番技術的に厳しいアンテナ共用さえさせるほどですから、それ以外にもおそらく細かい点でいろんな縛りがあることは想像に難くありません。回線数を増やすために基地局を増設するとか、無線キャリア数を増やすとか、そういったことに対してはかなり厳しく制限が入っているはずですし、もちろん、バックホールの物理線をいろいろいじくることも難しいはず。となると、たとえば、アクセスが増えて大変になってきたのでバックホールを太くしよう、なんてことは簡単にはできないわけです。

おそらく、全くやっちゃダメ、という程の制限ではないでしょうが、たとえば、配線してある天井裏に潜るには○ヶ月以上前に申請して審査を受けなきゃならないとか、鉄道事業者の工事や調整が優先なのでそういった作業が一切ない時期まで待たなきゃならないとか、新しい機器や線などはどんなものが入るのかの仕様を開示して審査を受けなきゃならないとか、二社以上の事業者の工事が一度にできるよう事業者同士で話をつけてこい(単独工事は不可)とか、たぶんそんな感じではないかと思います。私が鉄道屋さんなら、たぶんこの程度のことは吹っかけると思います。だって触られたくないもん(笑)。

ということで、地下鉄駅構内などでは、装置を追加しにくい、回線を増設しにくい、という事情があり、トラフィックの急増にはどうしても追いつかないということになります。地上の駅よりも地下鉄の駅が、より混雑の影響を受けやすいのは、これが一番強く効いていると考えられます。要するに、一昔前の前提のネットワークがいつまでも残ってしまう、ということ。

そしてもう一つ、これを加速させる地下の事情は、「逃げ道がないこと」です。地上だと、たとえば3Gではトラフィックが増えてくるとそれはノイズの増大として観測され、そうなるともっとノイズの少ないところへ行けないものか、という仕組みが働きます。いわゆるハンドオーバです。特に移動しなくても、トラフィックが集中して品質の落ちたセルからは端末ができるだけ逃げ出そうとするわけです。たとえ届く電波が弱くても、そのノイズが十分に低ければ利用できるわけで、本来その場所をカバーする目的ではなかった隣のセルなどにハンドオーバして品質を保とうとするんです。WCDMAではもともと品質ベースでハンドオーバをかける契機があるのでこれが有効に働いていますし、CDMA2000(EVDO)はスロット分割なのでこの仕組みが働きにくいのですが、先日のEVDO Advanced導入で能動的にこの契機をかける仕組みが入ったようで、いずれも、「やばくなったら隣のセルに逃げる」ということができるようになっています。

ところが、地下になると、その頼みの「隣のセル」が見えないんですね。基本的に最小限のアンテナしか設置しないということと、構造が複雑でしかも遮蔽力が強力なコンクリ+地盤に阻まれているため、ごく一部のエリアをのぞいて複数のセルがオーバーラップしていることはないと考えられます。であるため、ある一定のエリアはほとんど一つのセルが単独でさばいているようなもの。特に駅のホームとかとなると、設置位置も限られているためセル一つかせいぜい二つ、これで、乗車+列車待ちの千人単位の携帯電話利用者が殺到すれば、あっという間にパンクです。

で、これに加えて地下鉄特有の問題として位置登録輻輳も電車の入線のたびに起こります。地上駅であれば、駅の間のページングエリア境界でみんな一斉に位置登録を行うということは起こるわけですが、と言ってもアナログ現象である電波ですから、エリアが連続的であればある程度アナログ的にばらつきますが、地下は「一度完全圏外になる」「次に突然復帰する」というデジタル的なギャップがあるため、位置登録集中の効果は地上より非常に大きくなります。で、この位置登録輻輳のために一般のデータ接続への割り当てが先送りになったりして(一般的には位置登録などシステム上必須の接続はデータ接続などより優先処理されます)、溜まったデータがそのあとの時間帯にシフトしてトラフィックを底上げするわけで、トラフィックの増大による逼迫がより出やすくなっている、ということになります。

ということで、混雑が激しくなればまず地下鉄に来るはず、ってことで、地下鉄での品質には特に注目していたわけです。で、予想を超えて、地下鉄駅だと、ターミナルどころか乗り換え駅でもない近郊のヘボい駅でさえ症状が出るほどに混雑してきたことにびっくり、という感じなんですよね。

今、各社共同で地下鉄の駅間トンネルのカバーを進めていますが、これは上述の問題のうち、位置登録輻輳による逼迫を多少緩和してくれるのではないかと期待されます。というか、すでに都心で始まっている駅間カバー路線で、以前はかなりひどかった状態が同じ曜日・時間でもかなり緩和されているのを体感しています。位置登録や接続再開のアクセスが駅間でばらついてくれるだけでこれだけよくなるんだー、ってくらいです。

ってことで、地下ってのは何かと特殊な事情が絡みやすいので、トラフィック対策は大変なんですよ、というお話でした。ちょっと違うか。

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2012/5/31 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 4 comments
2012/4/18 10:00 · 事業考察 · 1 comment

最近のMNPキャッシュバックの多額化にはあきれるものがありますが、「ああいったキャッシュバックの資金はどこから出ているのでしょうか、1000円に満たない基本料からペイするとは思えません」というご質問をいただいています。今日はそのキャッシュバック(=販売奨励金=インセンティブ)の話を、昔も書いたような気がするけど改めて。

まずは誰でも知ってる話をあえて書くという実験から。インセンティブとは、新規加入回線を獲得することで、キャリアが販売店に支払うお金のこと。1回線獲得でいくら、という単純なもの以外に、その回線の○ヶ月の平均利用料が○円以上だったらいくらとかオプションをいくつつけたらいくらとか10か月後まで回線売上がある限りいくらとか、とにかくいろんなやり方でインセンティブが支払われています。

販売店は、そういったインセンティブがもらえることをあてにして、端末を値引きすることになります。昔なら単に端末の値引きでよかったんですが、最近は、キャリア自身が分割払い頭金ゼロ、みたいな売り方を主流にしてきてちょっと様子が変わっています。端末を値引きできなくなっちゃったんですね。とはいえ、他店に差をつけてたくさん売りたい販売店は、じゃぁ値引きできないならいっそキャッシュバックしちゃおうぜ、ってことになるわけです。と言ってもインセンティブの額は横並びなので、結局どこの販売店でも同額のキャッシュバックが、ってことになります。

インセンティブを出すキャリアは、他のキャリアとの獲得競争という視点から、販売店に支払う額を決めます。上のように店舗間の競争があるので、たくさんインセンティブを積めば自動的にたくさんキャッシュバックなりで実質値引きをしてくれるわけで、キャリアが単純に獲得数競合に勝とうと思えば少しでもたくさんインセンティブを積もうとするわけです。

また、インセンティブ額によって獲得数そのものを調整している、という話もあるようで。他キャリアがインセンティブを大量に積んで獲得攻勢に出ているときは、むしろその週は捨てて別の週に重心をずらす、みたいなこともやることで、コストを押さえながら最大限の獲得数を得る、ということをやります。

さらには、単純な純増数競争よりもMNP移動数が(宣伝効果的に)注目されることも増えたため、特にMNPに多量のインセンティブを積むことも増えています。特に今はauがMNPを重要指標としてMNP獲得にめちゃくちゃすごいインセンティブを積んでいるようです。近所のケータイショップでも、auへのMNPで6万円キャッシュバックとか書いてあって腰を抜かしました。

さて、こういう様に、獲得、そしてその結果としての加入者数、純増数やMNPトランスファー数を稼ぐために行われているインセンティブですが、その原資は、となると、まぁなんつーか、ぶっちゃければ「会社の口座にお金があるから」ってことなんですよね。回線そのものの収支とかは特に気にしていない、ってこと。その口座のお金はそもそもは既存ユーザが払った通信料ですから、あえて言うなら、ほかの人が払った料金がインセンティブの原資です、ってことになりますが。

前にもちょっと書きましたが、回線一つ単位の収支を気にするような個別最適をやるのは、競争環境に身を置く会社の施策としては下の下。戦争に例えると、新たに占領地を得た時、その占領地から得られる収益のみでその占領地の守備隊とその隣への攻撃隊を維持しようとするようなもの。そうじゃなくて、普通は、全領土から得られる収益を攻撃すべきところ、守備すべきところに適正に配分するものです。それと同じ。お金に色がついてるわけでもないし名前が書いてあるわけでもないんだから、全収益の中からどこに注力するか、という全体最適でものを考えない会社は確実に落ちぶれます(落ちぶれた会社の例・・・旧ウィルコム;苦笑)。

実は、ちょっと前、ほんの数年前までは、全部のキャリアが、回線単位の収支に固執していたんですよね。ARPUがこのくらいで、○円のインセを出したとき解約率が○%だから○ヶ月で回収後○円のプラスにまで持って行ける、みたいな考え方をしていたっぽいんです。それを盛大にぶち壊したのがソフトバンク。

ホワイトプランが出た時、「そんな金額で収支がプラスになるわけがない」とソフトバンク以外のすべてのキャリアが考えていました。どうせ自滅するからほっとけ、と。しかもインセンティブを大量に乗せて獲得攻勢する姿を笑ってさえいたそうです。

結果を見れば明らかなとおり、ソフトバンクはそうやって獲得した赤字覚悟の回線からなる顧客基盤の上に、いろいろな施策を打って見事に全キャリア中トップの収益成長率、利益率を実現しました。回線ごとの収支なんていう個別最適に固執する考えを打破し、「顧客基盤を確立するフェーズ」「ブランドを確立するフェーズ」「収益を拡大するフェーズ」などなどと時節に適した全体施策を打って成功を収めたわけです。笑われるべきは、本当の競争における戦い方を知らないどころか笑い飛ばしさえした古臭いキャリアたちです。

今でこそ、回線ごと収支を無視して、「今ある会社のお金をどこに入れるか」、という考え方が広がりつつあるようですが、それでもソフトバンクほど割り切っている会社はほかにはなさそうです。それはもちろん、オーナー社長会社かサラリーマン社長会社か、という違いもあるとは思います。株主の手前、「今年は顧客基盤の大幅拡大のため戦略的に赤字を出します」とは言えないですが、株主が自分であればそういうことも可能なわけで。一時期、ソフトバンク資金ショートで潰れそうみたいな騒動もありましたが、そういったことも孫先生は戦略的に行っていたことが今になればわかるわけで、まぁありていに言って経営の天才なんだよなぁ、ってことなんですけど。

話がずいぶんずれてしまいましたが、そんなわけで、そもそも「1回線ごときに関係するインセンティブ(キャッシュバック)の出元は気にしない、即解約による大赤はもとより長期的にも1回線という単位でペイする必要さえない」というのが答えになりそうです。要するに会社の口座にお金さえあればいい、ってこと。そういうことをさせるとオーナー社長で天才の孫先生率いるソフトバンクは非常に強いですが、まぁ最近ようやくドコモもKDDIも目が覚めてきたのかなぁ、って感じです。まぁそれでも株主が衆愚化している限りは思い切った施策は取れないんでしょうけどね。以上、インセンティブから考えるキャリア戦略の話でした(そうなの!?)。

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2012/4/18 10:00 · 事業考察 · 1 comment
2012/3/30 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment

質問、というか記事希望があったもので、とりあえずドコモ関係のサービス終焉に関するお話二題。

その1。マイエリア終了について。始めてからわずか三年でのサービス終了となりました。

マイエリアとは、言わずと知れた「フェムトセル」。フェムトセルという言葉の定義はちょっといろいろと異論があるかもしれませんが、基本的には「ユーザ回線を借用した超小型の携帯電話システム基地局」と言ってしまいます。ポイントは「ユーザ回線の借用」で、仮に同じ超小型基地局であっても、ユーザ回線を使わない場合はあえてフェムトと呼ばない、という頑固者もいたりするようです。まぁどっちでもいいんですけど。

基本的にドコモの「マイエリア」は、エリア補完目的ではなく、フェムトセル特有の特徴を活かした単独のサービス。もちろんエリア補完目的に使うこともできますが、十分にエリアである場合でも、申し込めば設置してもらえる、そういうタイプのサービスです。となると問題になるのが、干渉です。

もともとエリアである場所に新たにフェムトセルを打った場合、同じ周波数ペアを使う屋外のセルに対する干渉になります。特に問題が、端末から基地局への上り向けの電波。前の記事にも書いた通り、いくら端末~フェムトセルが近くても、フェムトセルそのもののアンテナゲインと受信感度がさほど高くない以上、端末はそれ相応の電力で送信しなければなりませんし、特に家の中で電波の通りの悪い場所に行った場合などは、それを乗り越えるために端末が大きな電力で送信した電波が、屋外の一般局に大きな干渉波として入射します。

こればかりはいくら設計しても避けられない問題。ドコモフェムトセルでは定期的に周囲の下り電波を受信して、自身の周波数や送信電力を自律調整したりと、対策はしていたようですが、それでも、ユーザ申告ベースでいくらでも増えうるわけで、それこそちりも積もればの要領で干渉が増えていくことになるわけです。いつまでも申し込みを受け付けていてはいずれ破たんに向かうわけで、ここでとりあえず「誰でも申し込めるサービス」としては終了、ということになったのでしょうね。

また、LTEの問題もあります。ドコモはメインバンドの2GHzからLTE化していく計画。となると、市中に邪魔になる2GHzの他の基地局が多ければ多いほど、LTE化が遅れるわけです。このまま受け付けて、どうしようもないほどびっしりとマイエリアだらけになってしまっては、LTEどころじゃなくなる、というような事情もあったのではないかと勝手に思っています。

まぁ、実際には全然売れてなかったみたいですけどね(苦笑)。制限厳しいし有料だし。単にあんまりに売れないサービスだからやめた、ってだけな気もします(笑)。

ちなみに、他社のフェムトは。KDDIの方は、どうやら、2GHz帯のどこかをフェムト専用に確保してやってるようです。加えて、オプションサービスではなく、エリア申告時にKDDIが判断してレピータやマクロエリア調整ではどうしようもない時だけ使う、みたいな感じで徹底して既存エリアへの影響を除外しているようです。ソフトバンクは、とりあえずは数稼ぎで何万局もばらまいちゃったというのはご存じのとおり。もちろん屋外と共用の周波数なので、収拾は大変でしょうね。これがあるばっかりにLTEが始められない、なんていう情けない事態も起こりうるかも。少なくとも、ネットワークに対して良い影響を与えているとは思えません。

以上、マイエリア終了について。

その2。ついでに、ドコモのmova終了について。

mova、すなわちPDCサービスの最後の灯が、間もなく消えます。もし可能だったらmova端末一台もって停波の瞬間でも見たかったところですが、残念ながら随分前にデュアルネットワークは解約しちゃって。うーん、なんとなく残しておけばよかった。でも当時は本当に貧乏だったんだよなぁ(苦笑)。

今考えれば、PDCというのは、日本の事業者にとっては重荷にしかならないシステムでしたね。もちろん、日本の異常な人口分布やお粗末な周波数事情には非常に合致したシステムで、当時としてはある意味でその選択肢しかなかったのかもしれません。より粗密に強い方式(CDMA)と、周波数割り当ての大幅な整理など環境が整った結果、PDCはWCDMAなど後進に道を譲るしかないということになります。まぁそもそも、PDCネットワークを作れる会社が日本企業だけだし、数が出ないので装置価格も高騰必至なので、仮に延命しようとしても高コストに苦しむことになるでしょうね。

海外では、まだGSMがまったく問題なく現役だったりするわけですが、やっぱり装置もネットワークも安い、というのが大きいですね。互換性も非常に高く、端末もWCDMA対応であればまず間違いなくGSMも対応しているし、GSMだけの端末ならおもちゃくらいの原価で作れちゃったりするわけで、ローミング目的としてGSMはあまりに便利すぎます。今後、すべての国でWCDMAやLTEになりGSMが同じように消えるのか、と考えると、なんとなくそれはなさそうな気がします。途上国とかだと、一度GSMでエリアを作ったらそれこそ腐って朽ち落ちるまでそれを使い、一部の需要の多い地域だけを3GやLTEで、みたいな考え方が多いようです。GSMなら保守も安そうだし。

という話はともかく、これで、日本の第二世代はすべて終了となります。PHSや2.5世代を勘定に入れなければ。ある程度の国土と人口がある一国の中で第二世代が完全終了した例は、たぶんこれが初めてになるんじゃないでしょうか。というか、日本ほどめまぐるしくサービス終了と全端末巻き取り、みたいなことを繰り返している国も珍しいように感じます。アナログはともかく、デジタル化してからはあまりそういうことはほかの国では起こっていないイメージ。なんつーか、日本人の先見性の無さをすごく表している好例のような気がします(苦笑)。まぁ、新し物好き、っていう側面もあるんでしょうけど。

ってことで、もうすぐPDC終了です。長らく日本の通信を支えた技術に最後のお別れをしましょう。そういえば私の実家は最近になってもPDCレベルまでエリアが充実してないなぁ。まだ居間にいるとWCDMA圏外になることがあるんですけど。

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2012/3/30 10:00 · 事業考察, 技術動向 · 1 comment
2012/3/28 10:00 · 事業考察 · 1 comment

ご質問をいただきました。ちょっと守備範囲外なのですが、あくまで噂で聞いたレベルでのお答えをしたいと思います。そのご質問は、「携帯などでは発信者番号通知が無料で使えるのに、NTTの0AB番号はデジタルでも有料で、さらになぜかNTT以外の0AB電話もほぼ横並びで有料だったりするみたいですが、なぜみんな共通なのでしょうか」というもの。

ちょっと調べてみた感じだと、NTTはアナログでもデジタルでもIPでも発信者番号通知サービスにはオプション料を取りますし、KDDIもソフトバンクもケーブルテレビも、0AB電話ではほぼ例外なく発信者番号通知をオプションサービスとして提供しています。

つまり、携帯や050IP電話などではほとんどの場合番号通知は無料なのに、0ABになると、銅線アナログだろうが光IPだろうが関係なしにすべて有料オプション扱いになっちゃう、これはなぜ、っていうことになります。

そもそも、アナログはともかく、デジタル化した電話での発信者番号通知なんて全然コストのかかるようなものじゃないんですよね。むしろ、ON/OFFできる仕組みを持たせる方が面倒なくらい。いっそ全員一律通知ってことにした方が、かえってコストは安くなるくらいのはずなんですよ。

IP電話ならもちろんIP上にほんの数バイトを足すことがどれほどのコストか、って話になりますし、ISDNなんてデフォルト通知されちゃうシステムなのをあえてマスクしてまでオプション扱いしていたりするようです。ここまで面倒をしてオプション化するのはなぜか、ってことですが。

ここからはあくまで憶測と妄想ってことで聞いてください。

問題は、NTT東西(と一部のメタル直収)がいまだにアナログ方式を使っている、ということです。特にNTT東西は、他社メタル直収のように局舎まではIP、なんてことはなくて、まだ回線交換網を使っているわけです。このアナログシステムで番号通知をするのは結構骨の折れる仕組みが必要で、提供するために結構なコストがかかっていると考えられます。もちろん、デジタル方式のように電話をかければ勝手にIDが付与されるようなものでもないため、網上のどこかで呼をインターセプトして番号を付与するというプロセスが必要ですから、そこにある種の呼数的ボトルネックができてきます。このボトルネック装置の容量見合いで、利用者数に比例したある種のコストがかかっている可能性もあるでしょう。

要するに、NTT東西のアナログでは、どうしてもかかっちゃうコストがあり、それを利用者にかぶせている、という事情があるわけですよ。そうなると、じゃぁデジタル(ISDN)は、ってことになるわけですが。

これは、なんかもう、「デジタルってだけでオプションが無料になるとか不公平だから料金取っちゃおうぜ」みたいな話があったとかなかったとか。要するに、コストなんて全然かかってないのに、同じ個人向け加入電話だから料金取っちゃえ、そのためなら、わざわざオプション非加入者の通知OFFの仕組みさえ入れちゃうぜ、ってなわけで。たとえば、同じデジタル交換網を使うPHS向け回線では、当然ながら番号通知オプション料なんて取っていません。でも、PHSの番号表示は紛れもなくNTT東西の番号通知の仕組みを使っています(もちろん最近はIP化されたのでNTT非依存になってきていますけど)。だから、加入者向けデジタルでオプション料を取っているのは、たぶん9割9分は便宜上の理由だと言えそうな気がします。おそらくIPもその流れ。

で、では他事業者はどうなんだ、と考えると、NTT東西がコストとか公平性とかでお金を取らざるを得ないオプションとしているなら、それと同じサービスで抵抗なくお金を取ることができる(収益アップできる)んじゃね?と考えるのが自然。だから、ある程度支配的な誰かがいきなり「無料です!」とか言って値下げ競争に走りだしたりしない限りは、有料ってことでお金を取る方が各事業者ともに利益率の非常に高いおいしいオプションとして継続できる、ってことです。

実際、NTT以外で支配的な事業者っていうと、せいぜいKDDI電話プラットフォーム利用事業者か、ソフトバンクテレコムプラットフォーム利用ファミリーか、ってくらいで、0AB電話加入者数シェアでいえばそれらを合わせてもまだ圧倒的に少数。しかもそれぞれ世帯リーチが限られているので、オプション値下げで拡販しても加入世帯数にはどうしても限りがある。だったら、当然のようにこっそりオプションとしてもらい続けた方がよほど得、という損得勘定の結果ということもできます。

もう、9割方が妄想で申し訳ないのですが、大体こんな感じで、みんなとりあえず番号通知オプション料取っとけ、ってなってるのではないかと私は思っています。

ってことで、結局、携帯電話やPHSや050電話は、0AB電話の競争相手じゃないから別の市場の競争の結果として番号通知は0円、0AB電話同士という競争の中では暗黙のカルテル状態になって有料オプション、って感じになったのかなぁ、という感じです。

以上、番号通知オプションが0ABではなぜか有料、の話でした。

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2012/3/28 10:00 · 事業考察 · 1 comment
2012/3/22 10:00 · 事業考察 · 12 comments

[追記]アップデートしました→国内各社のLTE展開プランのアップデート2012年8月号

ということで、主要携帯電話事業者の次世代マイグレーションプランがほぼ見えてきた感じですね。

箱を開けてみれば、元から具体的なプランのあったドコモとKDDIに加えて、イーモバイルがスモールスタート方式で、ソフトバンクが子会社利用方式でそれぞれLTEをスタートさせることになり、一応、全社LTEサービスを提供する形になっています。いや、日本はLTEに関してはずいぶん遅れていたんですが、一方、国内全事業者がLTEなんていう国は逆にほとんどなくて、誰か始めるとみんな一斉に対抗しちゃうっていう形、そういう意味ではちょっと珍しいお国柄なんでしょうね。

で、内容を見てみると、意外とバリエーションに富んだ感じ。ドコモは王道フルスペックLTEを、これまた国際メインバンド2GHzをしっかりと確保しながら進める形。KDDIはCDMA2000からのマイグレーションというハンデがあるからかかなりの出遅れがあるものの、800MHzと1.5GHzをたっぷり奢って最初から広大なエリアと大容量を狙う感じ。ソフトバンクは自社整備はとりあえず置いといて、これまたTD-LTEの国際メインバンドとなるであろうWiMAXバンド2.6Gを持つ子会社にそれをTD-LTEに転換させてさくっと整備する形、イーモバイルはエリクソン、Huaweiなどの持つ集中型同梱局を活用して既存WCDMAを足早にLTE化していこうという形だろうと思われます。

どっちにしろ主戦場はLTEに移ることになるわけで、上記の特徴を踏まえて、各社の長短と今後の戦略について簡単に私の考えをまとめてみます。

ドコモに関しては、まず国際バンドの2GHzを転換していくということで、既存のWCDMA主力バンドを削る必要があるという意味では、非常に整備の難しいやり方です。今後一気にエリア化を加速するとは言っていますが、そうはいっても、現状の過大なトラフィックを捌くことを考えると主力バンドをおいそれと削るわけにはいきません。非常に難しい運用が必要になりそうです。

とはいえ、2GHzはLTEに関してはほぼすべてのグローバル端末が対応していくでしょうから、端末の調達は非常に容易。よく、「2GHzはほとんどの国でWCDMAに使われているからLTEでは対応しない」という話が出てくるのですが、それは誤り。いや、事実としては間違っていないのですが、結局端末の対応可否ってのは、無線部品なんです。無線部品が対応するかどうか。すると、「2GHzに対応した無線機」であれば、その上に乗る通信方式はWCDMAでもLTEでもいいんですよ(一応エミッションマスクも少し変わるけど、それは枝葉の問題)。で、ベースバンドチップも今後はすべてLTE+WCDMA+GSMになりますから、全く同じ部品構成でどちらも行ける。要するに、「WCDMAのついで」で対応することになるんです。同じことが、GSMメインバンドの900MHzや1900MHzにも言えます。よほど面倒な帯域周辺環境がない限り、基本は方式に依らずついでに対応できる帯域はついでに対応しちゃうのが移動機ベンダの考え方です(テスト工数は増えてちょっとだけコストが上がりますけど)。

今後のドコモは、まずは1.5GHzの開始というのが、下手するとかなり早めに来るんじゃないかな?という気がします。いや、もちろん免許上は2014年春まではダメなんですけど、現状使っているMCAをドコモ負担で早期巻き取りする、なんていうことをやりかねない気がするので。もちろん、免許のない地域での開始は今年中にはあるんじゃないかと思います。後は、800MHz。5MHz程をLTEに振り向けそうな気がします。とにかくそういったことをやるための土台は持っているので、やり始めればすごいスピードでやっちゃうはずです。

KDDIは、今予定しているバンドが800MHz帯と1.5MHz帯ということで、おそらく端末調達に苦労するはずです。実はどちらも日本ローカル。ほかの国でも断片的に同じ構成を使っていることもありますが、唯一かなり重なりの大きい北米850が、KDDIの800MHz帯を見事にギリギリ外していて、逆に近すぎる構成のため両対応端末を作るとコスト激高、というのは割と有名な話。こうなるとKDDI-LTE端末はすべて自社調達ということになってしまうため、従来出てきたようなグローバル端末は、KDDI-LTEではほとんど期待できなくなると思われます。

さらに言えば、CDMA2000とのデュアルを作らなければならないという、規格上の面倒さも残ります。言わずもがなですが、LTEは3GPP系。3GPP系のシグナリングルールをほぼ完全に受け継いでいるため、チップのデュアル化が容易です。一方、CDMA2000は3GPP2。3GPP2のシグナリングは非常に特殊な作法で、少なくとも3GPP系シグナリングとのデュアル化は難しく、もちろん他の標準のシグナリング作法にも則っていないので専用チップ(ないしチップ内の独立ダイ)とならざるを得ず、この意味でも、端末調達は非常に苦しいことになるはずです。

一方、元々周波数再編の関係で使っていない800MHz帯の10MHz幅が全国で丸々使えちゃうということもあって、「75Mbpsサービス」としてのエリアは当面(数年先まで)は断トツの広さを持つことになると思います。加えて1.5GHz帯も最初から10MHz幅を全国展開するみたいなので、エリアの広さに加えて容量も断トツで、とにかくインフラの地力としては他社を圧倒する期間が長くなるでしょう。おそらくKDDIの有利はこの点で、まずは「75Mbpsエリアが広くて厚い」というのが売りになっていくのかなぁ、という気がします。

ソフトバンク、というかその子会社WCPの開始したTD-LTEサービスは、基本的にはWiMAXバンドのみでのサービスで、全部で30MHz、ただし下10MHzは運用制限があるので実質20MHz、FDD換算で10MHz幅が一つのみ、ということで、今後、大きなスペックアップや容量アップは期待できません。また、TDDに関して新たな帯域確保も難しい状況であるため、LTE-Advancedで用意されている周波数間結合によるスペックアップも難しく、「今のスペックと容量」が当面の限界のスペックと容量と言えそうです。

とはいえ、おそらく今後、TD-LTEは容量補完のための技術としてかなり注目度が上がることが予想され、加えて、FDD-LTEとのデュアル化が非常に容易であるという特徴もあるため、グローバル端末の多くがTD-LTEモードを備えることになることが予想されます。そうなると、米国と日本という大市場でデファクト化した2.5/2.6G帯は実質のグローバルバンドとなることがほぼ間違いなく、すでに欧州でも2.6GをTD-LTE向けに確保する動きが盛んです。WCPのTD-LTEは端末調達という面ではドコモに次いで有利な立場になるでしょう。

また、TDDであるが故の、無線アナログ技術による容量アップや高速化技術が使えるようになることもTD-LTEであるところの優位。バンドの拡張性がないことを補うためにさまざまなTDD特有のアナログ技術を投入しての容量アップなどが期待できそうです。加えて、ソフトバンク本体がLTEでも始めようものなら、絶対的な容量の観点でも他社を相当キャッチアップできる位置に上れそうです。

最後にイーモバイルですが、今のところは、1.7GHzという国際的にも仲間はずれなバンドで、しかも、DC-HSPAのために大量の周波数を浪費されているうえでさらにLTEを、という状況であるため、最大スペックに対して実効スペックが制限されるエリアが広すぎ、特に、従来HSPAで重点的に対策してきた都市部が逆にLTE高スペック化の足を引っ張ることになるというのが問題点。

一方、もともとイーモバイルは非常に素直な機器調達とエリア設計をする会社。ドコモ・KDDIのように無茶な開発を入れたりしないしソフトバンクのようにセルラーシステムと相性の良くないPHS局ロケーションを再利用したりといったことをしていないため、本当にありもののLTE局をあるがままのロケーションで展開できるという強みがありそうです。

加えて、ありもののハードウェアプラットフォームを積極的に採用してきたため、ハードウェアをほとんど変えずにLTE化できるようなパターンも多いと考えられます。グローバル製品を素直に採用し、グローバルベンダ技術による素直なエリア設計をしていることが、LTE化の速度に関してかなり有利に働く可能性が高いと言えそうです。ひょっとすると、WCDMA-LTEデュアル端末がある程度シェアを増やしたところで、DC-HSPAエリアがある日突然一斉にLTE化する、なんてこともあるかもしれません。

ということで各社のLTEの現状と今後に関してあくまでも妄想レベルでまとめてみました。

[追記]アップデートしました→国内各社のLTE展開プランのアップデート2012年8月号

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2012/3/22 10:00 · 事業考察 · 12 comments

ちょっと前に、とある近郊の小さな駅に用事があっていくことがあったんです。その駅の出口からすぐ目の前には、小さな個人商店がたくさん並んだ商店街っぽい感じの道があるんです。大体、すべてのお店が、間口3m~5m程度の。

そこで見た驚くべき光景とは。

隣り合ったお店ことごとくに、ソフトバンクのWi-Fiステッカーが貼ってあるんですよ。駅に一番近い定食屋みたいなところから、その商店の並びの果てまで、全部のお店に「Wi-Fi使えます(犬)」のステッカーが貼ってあるんです。

さすがに全部のお店をチェックするわけにもいきませんが、原則として、あのステッカーって、Wi-Fi APを設置してあるお店に張るものですよね。なので、駅前から全部のお店に、まさにローラー作戦でWi-Fi APを設置して回ってるんです。だからこそ、「24万AP!圧倒的!」なんていう数を稼げるわけですけど。

さすがに背筋が凍りましたよ。無線のお仕事をしている身としては。

2000年代前半、企業へのWi-Fi導入が盛んだったころ、ネットワーク系の専門誌は一時期どこも「これからは構内Wi-Fiで低コストLANを」という論調一色だったんですが、その1~2年後から一斉に「企業を悩ます構内Wi-Fi」という話題があふれたんです。

その理由は言わずもがな、無線LANの干渉問題。少し前に、無線LAN、というかWi-Fi(802.11系)の干渉についての解説を書かせていただきましたが、Wi-Fiは基本的に自律的にタイミングをずらすことで電波が潰れることを防ぐ方式です。ただし、電波がつぶれない代わりに、他のAPや端末が出した電波をよけるために、それを避けるのに必要な時間以上を自発的に止めるということが必要になるため、他のAPや端末が増えれば増えるほど加速的に効率が悪くなる方式です。

このため、一つのフロアに複数台を設置したり、またその配下に多くの端末を収容したり、あるいは、近隣に多くの他社APがあるような場所では、無線LANの通信効率が非常識なほど落ちてしまい、たとえば、Wi-FiとVoIPを活用した構内電話システムを作ってはみたけれどほどなくまともに通話できなくなってしまった、などという問題を起こしています。このため企業では、AP同士の配置を綿密に設計し、さらに隠れ端末問題の排除のためにWi-Fiの電波を遮断するパーティションを設けるなど四苦八苦していたんです。

さて、ここで最初の話に戻ります。ソフトバンクのAPが、要するに、3m~5mというすごいせまい間隔で大量に設置されている、という話になるんです。隠れ端末云々なんて言うまでもなく、これだけの密度となると、ビーコン信号だけで大変なものです。しかもほとんどが木造に近い商店なので、遮蔽効果は低く、50m、100mほど電波が飛んでしまう可能性が高くなります。

さらに、どこかのAPの下に端末が一台入るだけで、その干渉影響範囲は最大で倍にまで増えます。端末も同じチャネルで電波を出すからです。しかもその電波がビーコンや他のパケット送信に影響を与え、それらがどこかで輻輳的な状態になると、しばらくの間、周辺は再送パケットや遅延ビーコンであふれかえることになります。もし一台のスマートフォンがWi-FiをONにしたままその商店街を通り抜けると、周辺の2.4Gはすさまじい汚染を受けることになります。

間違いなく、ローラー作戦を行った営業担当は無線の知識はゼロです。無線の技術的な知識がないだけでなく、ほんの数年前に一般に手に入るレベルの情報誌にも乗っていたような無線LANによる干渉の問題提起さえ目を通していないようなずぶの素人です。こういう人たちが、単に上から「とにかく数を稼げ」と命令されて片っ端からAPを置いている状況です。その結果が「圧倒的な24万AP」です。

そりゃね、ソフトバンクが、適していないかもしれないロケーションにアホみたいに携帯基地局を立てて「基地局数No.1」とか言ってその実、実際の品質はもちろん干渉で落ちている、なんていう状況なら、ソフトバンクユーザは宣伝のために品質落とされてかわいそうだな、っていう、対岸の火事で済んでいたんですけど、残念ながら、今のAP乱造だけは、そうじゃありません。みんなの共有帯域で運用されるWi-Fiを無計画にばらまいて莫大な干渉を日々増やし続けているんです。

無計画のバカ、というだけならかわいいものですが、残念ながら、今ソフトバンクがやっていることは、2.4Gに対するテロリズムです。宣伝のためのAP数稼ぎと引き換えに他人を巻き込んだ環境汚染を進めているんです。

私の家の近所にも、お互い結構距離の近い個人商店などに無計画にAPが設置されているところがあったりして、その魔の手が私の家の至近にまで迫らないか、冷や汗ものです。ただでさえ、私の家は近所の2.4G利用者が多くてかなりパフォーマンスが落ちているのに、ここでソフトバンクのAPばらまきまで加わっては、さすがにお手上げです。

もうこれは切実な問題として、ソフトバンク様にお願いしたいんです。どうか、無用なAPばらまきをやめてください。無駄に密度の高いAPを間引きしてください。AP同士は最低でも100m以上離すように、技術を持ったベンダを使ってきちんと設計してください。設置店舗から路上に漏れて隠れ端末問題を起こさないよう、店舗の電波遮蔽の対策をきちんと講じてください。ソフトバンク様が自分の責任帯域で勝手にやっている分は看過できましたが、みんなの帯域を使うWi-Fiでは、どうか、それを環境問題として考えてください。伏してお願い申し上げます。

補足記事

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2012/2/28 10:00 · 事業考察 · 1 comment

「スマートフォンなどで容量がひっ迫するなどの問題が出ていますが、これを抑制するために定額を廃止する流れなどに今後なっていくでしょうか」というような質問を数件いただいています。

障害が多発するのも一因はスマートフォンによる通信量の増大といわれていますし、もちろん、その通信量をさばくために多大な投資を強いられる各社としては、定額料金で使い放題というのがその一因となっていることに当然気が付いています。そこにメスを入れようとする動きが起こることが予想されます。

「予想されます」なんて言っちゃいましたが、実際には、実質の定額廃止がすでに行われていますよね。ドコモのXi定額は5985円で通信量制限が月間7GB、7GBと言えば結構多い量ではありますが、それでも、「完全定額使い放題」ではなくなっていますし、ソフトバンクLTEは同じく5985円でドコモより厳しい5GBまでの制限が付きます。それ以上はいずれも128kbpsで通信できるとしていますが、実際には、128kbpsでは動画一つも満足に再生できないわけで、実質の従量料金制度に移行したわけです。

結局、結構前から各社ともに従量制への移行は課題だったわけです。たとえば米国の事業者のように、「今日からiPhoneの定額制の受け付けはやめます」なんて言うことをやってもよかったんでしょうが、おそらくそれは日本では受け入れられないのではないかと考えたのでしょう(というかAT&TとVerizonの定額廃止チキンレースを見ていれば、定額廃止が営業に莫大なダメージを与えることは明らかですし)。そうなると、なにか別の理由をつけて従量制に移行しなければなりません。

で、折よく同時期にスタートしたのが、次世代の通信方式「LTE」ということになります。LTE向けの新プランということにして、LTEを新しく利用するにはこのプランしかありません、という形で従量プランを用意すれば、比較的スムーズに従量への移行が可能になるわけです。

実際問題として、たとえばWCDMAとLTE、どちらの方が大量のデータに弱いか、と言えば、もちろんWCDMAです。無線としても容量が小さく効率が低いうえに、有線ネットワークにおいてもWCDMAの方が拡張がしにくく、拡張するにしてもコストの高い方式とならざるを得ないため、実は、WCDMAをこそ従量にしたいくらいのはずなんですよ。それでも、LTE向けプランを従量にするのは、やはり「新サービスにかこつけて従量化したい」という強い意志があるからだと思うわけです。

実際、ソフトバンクやイーモバイルがすさまじく勇み足気味でLTEを開始した理由は、この辺じゃないかと思っています。とにかく現行ネットワークで定額制をやっていくのはほぼ限界が近い、とはいえ、同じネットワーク同じサービスでいきなり従量です、というのは他社がやらないうちは無理、という状況にあって、一番厳しい状況にあったドコモが「新サービスでーす」と言って従量をはじめちゃった。こうなると、従来サービスのまま従量移行を、というのは無理で、ドコモと同じ方式での従量化を狙うしかなく、そのために大急ぎでLTEを仕上げた、というような気がします(妄想です)。

料金検討中のイーモバイルが半従量の料金になったりしたら、上の妄想が結構正しいのかも、なんて思います。もちろん、最後発KDDIも、「ドコモがやったなら」という形で同じように従量化するはずで、最初の目的はどうあれ、「LTE化」という節目を「定額料廃止」としてうまく利用する、というのが各社の思惑ではないでしょうか。むしろ、この大きな節目は最後のチャンスに近く、ここで手を付けないとずっと完全定額を提供せざるを得なくなると思います(もちろんそのぶん料金競争力は強いわけですが)。

ということで、「定額廃止の流れ」はすでに起きている、というのが私の見方。今年中に各社(ひょっとするとイーモバイルだけは除く、かもしれないですが)が、LTE系新サービスでは従量制プランだけを提供し、新サービス対応端末を販売主軸に据えて旧サービスを巻き取っていくことで、徐々に従量制に移行していく、という形でしょう。7GBや5GBは高い閾値ですが、「上限がある」という心理的キャップだけで相当通信量は抑制されるような気がします。ということで、各社の定額廃止についてでした。

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2012/2/28 10:00 · 事業考察 · 1 comment