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あーそういえばちょっと前に書いた、「Xiトーク24」のひみつに関していろいろと情報をお寄せいただいていて、その中でも特に多かったのが、「FOMA端末のままXi契約に移行できるらしいですよ」と言うものでした。

これは、もうその当日ぐらいからお寄せいただいていた情報で、実際、最近では全然モバイルに興味のない田舎の家族でさえ知っているレベルの話になっていて(笑)、もはや常識に近い話なのかもしれません。

となると、Xiトーク24が、Xiに移行させるためのエサだという前提が崩れるのでは、と考える向きもあるかもしれませんが、私の考えは、ドコモが狙っているのはXiそのものへの移行ではなく、「従量制への移行」、なんです。つまり、料金プランをXiプランに変えること=7GB制限による「実質の従量制への移行」なんです。もちろん、FOMA端末であっても、この従量制の罠から逃れられるわけではありません。

つまり、FOMA端末のままでプラン変更できるということは、「これまでどおり無制限のデータを使いたいか」「音声定額の代わりにデータを従量制にするか」と言う選択肢が出てきた、それだけの話なんですよね。で、「データ従量制」と言う部分が大きくアナウンスされていない現状、多くの人が音声定額に釣られてXiプランに変更し、実質従量制へ移行していっている、と言うことになるわけです。

ドコモはユーザがXiを使おうがどうしようが気にしていない、むしろ、バンドも狭いし局も少ない現状のXi=LTEを見るに、その利用はまだほどほどにしておいて欲しいと思っているくらいだと私は思ったりします。何しろ、無線部分が大幅に拡張されたLTEにおいては、今度は地上網(コア=EPC)がかなり厳しいボトルネックになるからです。実際、ドコモくらいの力があれば、あっという間に全国みっちりカバーするくらいはすぐに出来ると思うんです。それがなぜ現状、飛び飛びスカスカで水玉模様のエリアになっているのかと言うと、まだコア側の回線容量の手当てが追いつかない、と言う状況だからではないかと睨んでいます。

だから、LTEを使わずに従量制プランに変えてくれる人は、ドコモ的には大歓迎ではないでしょうか。ついでに無料通話分も消えて、他社通話分は丸々収益になるようになれば、収益的にもプラスになるかもしれません。案外、今回の施策、Xiそのものよりも、逼迫した3G容量をどうにかしようと言う目的で打たれたものかもしれません(ちょっと言いすぎ)。

まぁそれでも7GBはさすがにFOMAで到達するのは厳しいラインですから、通話をほとんどしない、なおかつ特にテザリングなどを多用する向きには、Xiプランへの移行は十分にお得な選択肢となりうるわけで、考えてもいいのかもなぁ、とも思います。でわ。

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2011/11/16 10:00 · 品質動向 · (No comments)

スマホ速度計測サイトの今日この頃について。

http://speed.ktainews.net/

時間帯別グラフを出すようにしてちょっとたちました。まだまだデータが少ないので確度は低いですが、一応、下方向に修正する方向でデータの少なさを補正しています。その結果ですとの前提で見ると。

各端末種別時間帯別グラフ

いや、各社がどの時間にどう、と言う話の前に、方式だの端末だの結構違うものなのに、案外各社同じレベルできれいに並んでいるんですよね。

全体的にソフトバンクがやっぱり低調。ドコモはソフトバンクの良い版って感じですが、22時台などはかなり速度が下がります。一方、KDDIは上の伸びも無いけど速度が落ちる時間帯も落ち幅が少ない、と言う感じ。なんとなく、WCDMAとCDMA2000の特徴がうまく出ているような気がします(この記事の下のほう参照)。まぁ、KDDIにはWiMAXがあるってのもあるんでしょうが。

っていうか4時とか5時とかの時間によく計測してくれる人がいるものです。いや、結構なデータ数が無いと統計対象にならないように作ってあるんですけど、5時台なんて全社出てるし(笑)。今後も速度統計調査にご協力お願いしま~す。

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2011/11/16 10:00 · 品質動向 · (No comments)

メールで頂いた疑問についての話です。頂いた質問の趣旨は以下のとおり。

イオンSIMを使っているが、ある場所で圏外となるため、エリア要望を出そうと思った。サービスのページでは「エリアはドコモのページで確認しろ」となっているためドコモのページで確認してみるとエリア内。なので、そこからエリア要望をドコモに送付したら、ドコモから「イオンSIMの人の要望は受け付けていません、提供元の日本通信にどうぞ」と門前払い。インフラ整備はドコモがやっているはずなのに、ドコモが受け付けないのはおかしいのではないか。

と言う感じ。ドコモのエリアのことをドコモに問い合わせて何が悪い、って事なんですが。

この話、二つの面での謎解きが出来そうです。一つが「事業者としての責任分界点」、もう一つが「顧客サービス」。

まず、責任分界点の話。要するに、MVNOとしてサービスをする事業者と、そのMVNOにネットワークを貸すMNO事業者の間で、どのように責任を分担しているか、と言う話です。

MNOは、MVNOに対してネットワーク機能の一部を貸すことを責任として負っています。ですから、ネットワーク、つまり、回線やエリアに関しては、MVNOに対して説明する責任を負っているわけです。しかし、MNOはMVNOの加入者に対しては何も責任を負っていません。MVNO加入者に対しては、MVNO事業者が窓口となる責任を負っているわけです。

このような責任の分界になっている理由の一つは、MNO事業者と末端加入者との間に契約関係が無いからです。エリアの確認となると、当然ながら、その加入者がどのエリアでどのように移動した結果なのか、と言う点も確認する必要が出てくることがあります。しかし、MNOは末端加入者のそういった情報を自由に扱ってよいという許諾をもらっていないので、やりたくても出来ません。

ですから、この場合は、契約関係のあるMVNOが窓口となり、MVNOが加入者の代わりにMNOに対して調査することを許諾し、MNOが調査した結果をMVNOに伝えて、最終的に末端契約者に情報が提供される、と言う形式を取るしかないわけです。

MVNOがMVNOであり単なる代理店ではない理由はこういったことにあります。MVNOはMNOに対して自分の顧客の情報を一切開示する必要が無いのです。開示しなければならないのは、自分が借り受けるネットワークに対して接続するであろう端末の情報だけ。MVNOは責任を持ってその端末と加入者の情報を管理し、それらを契約で保護することが必要なわけです。

と言うことで、もしドコモが直接の問い合わせに対して答えてしまうと、MVNOに対する越権行為になります。契約関係なしで調査を行うと個人情報保護法違反になる可能性さえあります。と言うことで、ドコモ的には「やりたくてもやれない」と言うのが答え。

それからもう一つ、顧客サービス的な視点で考えると、たとえばドコモは、エリアの不満に対して48時間以内の駆けつけサービスを行っています。これは、ドコモの加入者に対する特別サービスです。ドコモの加入者以外の人にはそういったサービスを行いません。

そして、MVNO加入者は当然ドコモの加入者ではありません。そして、ドコモから見れば、MVNOは立派な「競合事業者」です。MVNOとは、MNOも含めて公平に競争することが前提で作られた制度ですから、当然です。競合事業者の満足度向上のために自社のリソースを消費するかというと、それはありえません。ドコモがソフトバンク加入者に対してエリア調査をしてあげるようなものと同じ話です。たとえネットワーク自体は同じものとしても、タテマエ上は「別の通信網による別の通信サービス」なんですよね。本当は「ドコモのネットワークを使っています」なんて書いちゃうこともよろしくない、と言うレベルのもののはず。なんせ競合事業者のインフラの評判にただ乗りしようってんですから。

そんなわけで、ドコモとしては、ライバル会社に手を貸してあげるなんてもってのほか。一方、大切な顧客であるMVNO(日本通信)様から問い合わせがあれば、そりゃもう手取り足取りサポートします。「顧客である日本通信」と「競合である日本通信」をきっちりと割り切る必要がある、と言うことですね。

と言うことで、イオンSIMのサービス利用者がドコモに問い合わせをしても冷たくあしらわれるのも、道理と言えば道理なんですね。とはいえ、そこで逆にドコモとして暖かく対応することで、ドコモのイメージアップにつなげ、ドコモネットワーク利用のMVNO利用者の満足度を上げる、と言う間接的な満足度アップにつなげるという芽もあるのに、もったいないなぁ、と思う気持ちも無きにしも非ず。と言うことでMVNO加入者へのドコモの対応についてでした。

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セブン-イレブン 23区1200店に非常用電話と言うニュースに関して、災害時に繋がりにくくならない回線ってなんなんでしょう、と言う趣旨のご質問をいただきましたので、簡単に。

えー、ざっくりと言ってしまうと、基本的には、日本の通信事業者は法令に従って「災害時優先電話」の仕組みをみんな備えています。なので、災害時に繋がりにくくならない電話としては、どの事業者の回線を使っても同じです。

もちろんNTT東西も優先電話システムを持っていますので、その回線をセブンイレブンに引っ張って配備すればOK。これで疑問は解決ですね。よかったよかった。

・・・と言いたいところですが、法令ではもう一つ決まりがあって、それは、「優先電話が置けるのは法令で定められた対象だけ」となっています。それは、救急・消防、警察、自衛隊、ライフラインインフラ事業者、新聞・通信・放送事業者、その他の防災機関、と言う感じになっています。どう考えてもセブンイレブンはこれに該当しません。

それはそうで、元々法令で優先電話を決めたのは、こういった機関の通信を確保したいからで、こういった機関以外にも無節操に優先電話をばら撒いていては、そもそもの「優先したい」と言う目的を達成できなくなります。優先電話同士で輻輳が起きてしまうからです。

さてこういった縛りがある中で、どうやってセブンイレブンへの災害用電話配備を成し遂げたのか。私は、二つの方法のどちらかだと思っています。

一つ目は、NTT東日本の独断で、セブンイレブンの1500店舗を「その他の防災機関」に指定した、と言うもの。対象の指定は、実は事業者の判断に委ねられています。もちろんあんまり外れたことをやると怒られるんでしょうが、災害時の通信用スポット、と言う考え方であれば、それがたまたまセブンイレブンでした、と言い張ることはさほどおかしいこととは思えません。

もう一つは、公衆電話。実は、公衆電話は、優先電話に指定されています。それは、災害時などの通信用スポットとして機能させるため。また、公衆電話自体は事業者自身の持ち物なので、「優先電話を該当しない団体に与えた」と言うことになりません。であれば、そういった「公衆電話」がたまたまセブンイレブン1500店舗にくまなく配備されているんです、と言う言い分でこのサービスを実現することが出来ます。

と言うことで、上記のどちらかで実現しているんだろーなー、とは思うのですが、ここから先はよく分かりません。多分後者かなぁ、と言うくらい。と言うことで、災害用電話のコンビニ設置のからくりについての考察でした。でわ。

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何度か考えたんですよ。ドコモからauへの乗りかえについては。実際、エリア的にネックとなっていた実家の方は、auのエリア拡大で、床に放置すると圏外になることがあるドコモよりもマシになったくらいだし。しかし、考えるといろいろと問題があって移行できずにいるわけで、今日はその分析結果をぶちまけてみる自己満足のひとりごと。

元々、家族間の通話無料と言うのがあって、これが、ドコモをメインにする決め手でした。その当時、ドコモ(とウィルコム)以外は惨憺たるエリア状況だったんですよね、通話相手の住む私の田舎が。で、親の仕事先がウィルコム圏外だったので、必然的にドコモにならざるを得なくなったわけです。

では、エリアも解決したauに変えるという選択肢はあるのではないか、と考えてみて、やっぱりいくつか問題があることが分かったのですよね。

まず、Eメールアドレスが変わる。もうこればっかりはどうしようもない。田舎の家族もそれなりにメールを送りあう知り合いがいて、このすべての相手にメールアドレスが変わりましたとお知らせするのは大変です。なんかEメールアドレスの事前予約とかまであるみたいですけど、なかなかこれは乗り越えにくい壁。

ただそれをクリアしても、やっぱり問題があって。ぶっちゃけ、家族間のメール無料サービスに差がありすぎる。ドコモは添付付きも含むEメールが家族間送受信無料なんですが、auは、無料になるのはCメールの送信だけ。これはいくらなんでもサービスレベルに差がありすぎ。Eメールは(送達確認を除けば)ショートメッセージの代わりになるけど、ショートメッセージはEメールの代わりにはならないんですよ。要するにサービスデグレ。

確かにファミリー割引グループのうち半数はパケット定額サービスを使っているのでEメール送受信料は気にしなくて良いのですが、後の半数はパケット定額を使っていません。はっきり言って家族間では添付付きメールをかなり多用するので(猫とか猫とか)、Eメールの料金が一気に高額化することが目に見えています。これが、Cメールだけのコミュニケーションに時代をまき戻せと言われても、もうさすがに無理です。

また、通話料に関しても大問題が。ドコモは現状、2ヶ月繰り越した後、家族間で相互補填できる無料通話がついています。これが本当に助かるんです。家族全員タイプSSですが、ここ一年以上、基本料以上払ったことがありません。ファミリー割引参加人数がかなり多いため、2ヶ月溜め込めることと合わせてかなり強力に平準化作用が効くんです。

これを、auの繰り越しサービスでシミュレーションしてみたところ、基本料を超えて払う額、繰り越しアウトで捨てる額がかなりの額になるんですよ。特定の個人に限ると、一度に5千円以上通話する月と全く使わない月がかなり激しい。ていうかはっきり言うと、私が(笑)最大の消費者で、隔月くらいで全員の2ヶ月繰り越しアウトをほぼすべて使い切っているんですが、auになると私がひとりで2ヶ月に一度くらい通話料だけで7~8千円払うことになり、他の人は毎月5千円の通話料残分を抱えて残りを捨て続けている感じ。分け合いコースにしても、私の最大消費月を賄いきれずにはみ出してしまい、消費月じゃない月は全員無料通話を捨てちゃうという感じ。とにかく、私の利用パターンに対してドコモの繰り越し&分け合いがうまく出来すぎていて、どう移行しても支払額がはね上がってしまうんですよ。

と言うことで、いずれも、Eメール料金の高額化、通話料の高額化、と言う料金上の問題で、ドコモからauへの移行は無理、と言う感じなんですよね。いや、よくよく見たら、本当にauは通話・メール面で「ドコモの劣化版」「ソフトバンクの劣化版」ばかりで、料金的に優位なサービスがひとつもない。6千円そこそこでCDMAもWiMAXも使い放題テザリングし放題なEVOをリリースしたキャリアとは思えない。

いや、EVOがあまりに快適なので、全部auにしちゃえばさらになにか良いことがあるんじゃないかなーとau移行を検討してみたんですが、ダメでした、って話で。でもいろいろ見てみても、EVOとまとめても全然おいしくないですね、実際。今のままでいっか。auひかりを引っ張ったらまた考えます。

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無線LANを使った負荷分散(トラフィックオフロード)が盛んに語られるようになり、携帯電話各社とも、Wi-Fi AP数を大幅に増やす方針を発表しているわけですが、一方、各社が勝手にどんどんAPを増やしていくことでいずれ起こる問題が、「Wi-Fiの干渉」の問題です。と言うことで今日はこの話。

まず、Wi-Fiの基本的な話。Wi-Fiは、2.4GHzの「ISMバンド」と言う特殊な周波数を使ったシステムです。この周波数は、電力やマスクなど簡単な規定さえ守った機器であれば、どんな場所でどんな風に電波を発射してもOK、と言う、電波を使ったシステムとしては楽園のような周波数帯。なので、Wi-Fiだけでなく、Bluetoothや無線マウスや簡易トランシーバやコードレスフォンなど、ありとあらゆる「簡易的な無線システム」向けに使われています。

で、とりあえず他のシステムは無視してWi-Fiだけに限っても、どこに置いちゃダメとか誰に干渉を与えちゃダメと言う決まりはなく、そのために、どこにでも好き勝手に置く事が出来るというメリットがあります。

ただし、「誰に干渉を与えちゃダメ」と言う規定がないということは、誰から干渉を受けても文句を言っちゃダメ、と言う意味でもあります。そのため、Wi-Fi(802.11シリーズ)は、そういった干渉を受けることを前提としたシステムとして設計されています。

つまり、Wi-Fi同士であれば狭義での「干渉」(送ったはずの電波信号が潰されてしまうこと)は理屈上は起こらないように作ってあるんですよね。一方、広い意味での干渉、つまり、他のWi-Fi機器があることによりパフォーマンスが落ちること、に関しては、それが起こることを防止できないという原則があることになります。

さてそれを支えるWi-Fiの仕組みについて、ちょっとだけ踏み込みます。一般的な携帯電話方式であれば、無線リソースをいろいろな方向(たとえば時間、周波数、コード・電力、などなど)で区切り、それぞれの区切りを必要な人に占有させることで端末の通信同士が干渉しないようにしています。これを「多重化方式」と言うわけですが、Wi-Fiでは、すべての通信を一つの制御装置がコントロールできるわけではない、という前提のもと、実際の時空間において「その場所は誰も使っていないこと」を逐一確認し、誰かが使っていたら自発的に我慢する、と言う方法で複数機器が干渉しないようにします。これをCSMA/CAと言います。

具体的には、たとえば802.11b系では、パケットを送信する前に(通常)50マイクロ秒だけ空受信を行います。その時間内で、一定以上の「無線電力」を検出したら、送信取りやめ。この「無線電力」はWi-Fiに限りません。Bluetoothでもコードレス電話でも、なんなら電子レンジが発射元でも、とにかく「使おうと思っている周波数帯で一定以上の電力が飛んでいたら」になります。

もちろん送信を取りやめっぱなしになってはいけません。取りやめたパケットは、乱数で決まる一定時間後に再度送信しようと試みます。もちろんこのときも再度50マイクロ秒の無線チェック。ここでその時間内、無線電力が規定以下だったら、送信を始めます。

ただし、単に自分が見ただけじゃいまいち信用できない。実際にアクセスポイント(AP)に届いたときに、自分からはよく見えない人が別の電波を出しているかもしれない。ってことで、Wi-Fiの一般的手順では、送信する前にAPに対して「ほんとにここ空いてるよね?」と確認する信号を出します。で、APが「うん、マジ空いてる」と返事をよこします。この確認と応答は本当に一瞬、数マイクロ秒です。これが済んだらいよいよデータ本体の送信です。※この手順を省略する場合もあります。

通常、パケットの長さは、1ミリ秒から数ミリ秒くらいです。この間、端末は単に無線上でこのパケットを放り出すだけ。一方この端末がこういうようにデータを放り出すと、他の端末からもその電波を検知できるようになります。他の端末がもし送信したいパケットを持っていても、最初の50マイクロ秒のテストでこの端末が送信していることを検知するので、この端末の送信が終わるまで待ってくれることになります。

と言うことを全部の端末が自発的に行うことで、自分の送信するデータが他人のデータによって潰されないような仕組みになっています。この「他人」は、先ほども書いたとおり、Bluetoothもコードレス電話も電子レンジも、そしてもちろん他のWi-Fi APに関係する通信も含みます。

さて、Wi-Fiの仕組みはここまで。次に、周波数の話。Wi-Fiの使える周波数、2.4GHz帯は、Wi-Fi的には全部で14のチャネルに分割されています(日本では)。一方、Wi-Fiの電波は一度に5チャネル分の帯域を汚染します。すなわち自分と両側2チャネル。つまり、第1チャネルの電波は、全部で[-1、0、1、2、3]のチャネルに「電力」をばら撒いてしまうわけです(もちろん-1、0と言うチャネルは便宜上のものでそこを選択することはできない)。

と言うことは、もし第1チャネルを使い、それと全く干渉しないチャネルを確保したかったら、最低でも第6チャネル([4、5、6、7、8]チャネルを占有)以上を選ばなければなりません。この流れで行くと、実はお互いに電波が届く場所に置くWi-Fi APが干渉なしで選べるチャネルのパターンでは、最大三つのAPしか置けないことが分かります([1、6、11]や、[2、7、12]、[3、8、13]、[4、9、14](日本のみ)のパターンしかありえない)。

干渉しない選び方では三つしか置けない。となると、三つ以上のAPが同じ場所にある場合は、少なくとも一組は干渉するAPがあることになります。この場合、その組のなかのAPは、その配下の端末がお互いに干渉を避けあう上の仕組みを共有していることになります(これを、干渉ドメインを共有している、と言うこともあります)。言ってみれば、その組の中のすべてのAPの配下にあるすべての無線LAN端末は、仮想的に一つのAPの下にぶら下がっているように振舞う、と言うことです。

今、駅などの多い場所では10や20くらいのAPが軽く見えます。しかし、それは、AP10個分、20個分の容量があるという意味ではありません。一つの場所(お互いに電波が届く距離内)では、どんなに頑張っても3AP分の容量しか確保できません。それ以上はお互いに干渉して潰しあうわけです。しかも、配下の端末が増えるほど、確保できる容量は減っていきます(お互いのタイミングがずれる確率が上がるため)。

また小さな話ですが、それぞれのAPは、「ビーコン」と言う信号を100ミリ秒に1回送信します。このビーコンにAPのSSIDの情報や通信能力の情報などが乗っていて、これが無いとAPに接続できないのですが、このビーコン、実は長さが1ミリ秒ほどあります。そしてこのビーコンも、先ほどと同じ仕組み、つまり「最初にちょっと調べて誰も送信していなかったら送る」の原則で送られます。ってことは、あるAPがビーコンを送信し、別のAPが同時にビーコンを送信しようと思ってぶつかったらちょっとだけ待つ、と言うことが起こるとその間の時間は確実に無駄時間として潰されていきます。

たとえば、もし同じ無線LANチャネルに10個のAPがあったとしましょう(全無線チャネル合計で言えば同時にAP30個分のSSIDが見えている状態)。10台のAPが100ミリ秒に1回、1ミリ秒の送信を行う状態。と言うことは、単純に合計して10ミリ秒がビーコンの送信に消費されています。もちろんその前後には確率的に利用できなくなってしまう空白域が生じるため、延べればもう少し長い時間が「利用不能時間」です。これは、全帯域に対して1割以上にも及ぶわけです。単にAP数が10台に増えただけで、最大の通信速度が1割落ちる。これが20台になったら、30台になったら、と考えると恐ろしいことです。

と言うことで、無線LANは自由に置けるけれども、好き勝手に置きまくってしまえばお互いに干渉し、配下の端末が増えすぎてまともに通信できなくなることもあれば、ビーコンだけで大切な帯域を食いつぶされてしまうということも起こるわけです。無線LANを口呼吸と表現した人がいましたが、しかし、実はその口呼吸、同じ酸素ボンベをみんなで共有している口呼吸と言うことを忘れてはいけません、と言うことです。

なわけで、結局は通信事業者は、自身が信用され託された帯域、つまり「ライセンスバンド」をしっかりと有効活用しなければならないというのが、やはり原則なんですよね。一つの酸素ボンベを口呼吸で取り合うよりは、きちんと鼻づまりを治して「信託された酸素ボンベ」を鼻呼吸することが通信事業者の義務であり、また快適な通信を実現できる究極の解でもあるわけです。

ということで、むやみに増え続けるWi-Fiスポットの干渉がどのように出るのか、と言うことが少しでもお伝えできていれば幸いです。それでわ。

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小ネタ。電車とケータイの話。

と言っても、車内での通話で電磁波が云々なんて話ではなくて、ホームや電車内でWEBなど通信をするときの話です。特に、地下鉄の話。

電車にはたくさんの人が乗っていて、ほとんどの人がケータイを持っています。そんな中の多分1割くらいは、何か通信をしていることが多いでしょう。皆さんも、電車内でケータイをいじくって暇つぶしすることがあるのではないでしょうか。また、ホームで電車を待つ間にも、ケータイをいじくることがあったりするのではないでしょうか。

そんな時、こんな経験をしたことがありませんか?

地下鉄でトンネル内は圏外、駅が近づいてきて電波が復活して、さて通信しよう、と思ったら、アンテナマークはしっかり立っているのに全く通信できない。

地下鉄のホームでケータイをいじくっているとき、ホームに電車が入ってきた。ちょうどそのときにブラウザのリンクをクリックしたんだけど、なぜか通信できない。

そんなことねーよ、と言う人も多いかとは思いますが、あ、そういえば、と思い当たる人も結構いらっしゃるのではないでしょうか。

さて、前に、圏外の話でも書いたのですが、携帯電話は、エリアの中で大きく移動した場合、「自分はここにいますよ」とネットワークに教える機能を持っています。この通知をしないと、着信も出来ないし場合によってはその他のサービスもすべて使えません。この通知をしないことは「圏外」と同じことです。

一方、地下鉄と言うものを考えると、そこそこの距離、1km以上の距離をとって各駅が配置されています。そして、地下鉄は当然、出入り口を通して外のエリアと繋がっています。

このため、地下鉄の中の「ページングエリアID」は、その地下鉄の外のエリアと同じにしておかなければなりません。しかし、ページングエリアはそれほど大きくとるものではありません。ページングエリアの大きさは、そこで電源の入っている携帯電話機の数と反比例するように決めます。それは、ページング(呼び出し)の信号をページングエリアの中で共有するためです。携帯電話機が多すぎると、ページング信号だけで無線が逼迫してしまいます。と言うことは、人口の密集する都心部、地下鉄のある都心部では、ページングエリアはかなり小さく設計してあるわけです。

すると、隣の駅と「ページングエリアID」が異なる、と言う場合が非常に多くなります。東京都心で言えば8割9割は違っている、と言うくらい違っているかもしれません。

次に、携帯電話機の視点で見てみましょう。ある地下鉄駅のあるページングエリアID、ID-Aを見ていた携帯電話機。これが車両に乗ってトンネルに入ります。ある程度進むと、ID-Aが見えなくなります。ここで次のIDを探すわけですが、見つからなければ「圏外」になります。

さて、次の駅が近づいてきました。携帯電話機は一生懸命電波を測定し、次の駅のページングエリアID、ID-Bを見つけます。自分は、ID-Aにいるつもりなので、ID-Bの下にいる、と言うことをネットワークに伝えなければなりません。

そこで、ネットワークにアクセスし、無線回線を割り当ててもらって、その回線を使い「自分ID-Bに移りま~す」と通知して、回線を切断する、と言うことを行います。

これが、ある一台の携帯電話機に起こること。しかし、地下鉄車両の中には、実に何百人と言う人が乗っていて、そのほとんどがケータイを持っています。つまり、何百台と言う携帯電話が上記のような動作を一斉にしてしまうのです。

こうなるとネットワーク(基地局)は大変です。何せ、何百と言う「接続要求」が一斉に殺到するんです。通常、基地局は同時にさばける接続は50程度、高級機で200程度といわれていますから、何百となると、これはもう完全にこの処理だけでオーバーフローです。

さて、これで謎が解けてきました。そう、地下鉄に乗っていて駅に近づいてもすぐに通信できなかったり、駅で待っているとき車両が入ってくるとパケットが繋がりにくくなったりするのは、そのホームの基地局が上のような理由であっぷあっぷになっているから、ってことなんですね。

実際には、携帯電話の方式にいろいろと小細工がしてあって、たとえば一番単純には、「新しいIDが見えたら、そこから乱数秒待ってから位置登録しましょう」と言う仕組みが入っています。このため、位置登録のためのアクセスはある程度ばらつくので、基地局が完全にどんづまるようなことはまずありません。が、とはいえ、その他の通信の接続要求が届きにくくなると言うことは確実に起こります。

普通、WEBなどでパケット通信しているとき、実は結構こまめにチャネルの張り切りを繰り返しています。データが無ければ結構短い間隔(5秒とか)ですぐに無線チャネルをOFFにするんです。無線を効率よく使うために。つまり、WEBのあるページを見ていて、リンクをクリックしたときには大抵は新たに簡単な接続要求が走っています。しかし、上記のように接続要求処理が混雑していると、この接続要求の待ち時間も大きくなるため、少しの間通信が出来なくなったように見えるわけです。

と言うことで、地下鉄で駅ホームに電車が入ったときに、その一帯で通信が滞る理由についてのひとネタでした。

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2011/8/25 10:00 · サービス解説 · (No comments)

と言うことで先日のエントリーのあまりの楽さに味をしめて、今度は、携帯電話各社のスマートフォンテザリング対応状況と料金・スペックの比較&まとめ。

ドコモ KDDI ソフトバンク イーモバイル
可/不可 WiMAX対応機のみ○ ×
定額料金 10,395円 5,460円 4,280~6,580円(基本料込)
テザリング通信方式 HSDPA WiMAX or CDMA HSDPA
テザリング通信速度 14Mbps/5.7Mbps 40Mbps/10Mbps or 3.1Mbps/2.4Mbps 7.2Mbps/5.8Mbps
テザリング中の本体使用 PC通信扱い
キャリアサービス利用不可
※spモードメール送受信のみ可
スマホ通信扱い(共通) スマホ通信扱い(共通)
テザリング有効化ウィジェット なし デフォルトであり デフォルトであり
その他 128kbps限定であれば定額料5,985円 WiMAX利用は+500円

こんな感じ。あ、一応、「○○を××すればどのキャリアでも出来るよ!」とか「△△を□□すればもっと安く出来るよ!」と言うツッコミは禁止の方向で。キャリアが公式に認めていない方法は当然キャリアからネットワーク的に制限される可能性がありますし、はっきり言ってそういった方法って、一般人から見ればスーパーハッカー並の超絶テクニックなんですよ。出来る人は「手順さえ守ればカンタン」と思うんでしょうけど、前提としてそういったproceduralな思考が出来るって言う一番高いハードルがあることを忘れているんですよね。「出来る人」が「出来ない人」を理解できないのはこの辺に問題があるんですよねぇ。話がそれましたが、とにかく、「お仕着せ」で出来ること以外は原則「出来ない」と分類した上でのまとめです。

料金的にはイーモバが一番ですが、やはりエリアに不満が出そうです。少なくとも、私の経験的に言うと、帰省や旅行ではイーモバは確実に圏外だったので。エリアマップを見る限り、関東近郊はほどほどに充実していますが、後述のau+WiMAXに比べるべくも無く。また、購入方法によって料金が変動するし、もう条件がしっちゃかめっちゃかで何がどうなっているのかさっぱり分からない超複雑な料金体系。同じフラット料金プランなのに10通りくらいの料金プランがひしめいていて、「実際に店頭で買ったらどの料金になるのか」が全く分からない状態。なので、この表では、幅のある表記にさせていただきました。

料金・エリア・スピードのバランスではやはりKDDIが突出しています。CDMAの超広いエリアのどこで使っても同じ料金だし、WiMAXエリア内ならテザリング最速だし、それでいてスマートフォンを普通に使う料金からの追加は一切不要、と言ういたれりつくせり状態。ただし今のところ1機種、EVOのみ。しかし、この秋にはWiMAX対応スマートフォンが何機種か出るという話もありますし、選択肢が拡がりそうです。LTEになってもこの料金体系は維持してほしいですね。

全機種対応を謳うドコモですが、テザリングするととたんに料金が1万円オーバーになってしまうのはいただけない。一応、128kbpsに制限すれば6千円弱に抑えられる、と言うことにはなっていますが、さすがにこのご時勢、128kbpsでは相当なストレスを我慢する必要が出てきそうです。ドコモがテザリング解禁!と大々的にやったのも、単にドコモもやってるよというアリバイ作りに近いような気がするひどい料金設定、ちょっとこれで使う気にはなれません。

ソフトバンクは公式にはテザリング非対応。そんなわけで、iPhoneユーザはあれやこれやの工夫をしてテザリング(的なこと)をしようと努力していますが、JailBreakが必要だったりプロキシ対応のアプリケーションしか動かせなかったりとやはり制限は多いようです。いずれにしても公式で非対応である以上、どの方法も突然塞がれても文句は言えないわけで、まぁソフトバンクなら素直にスマートフォン単体でネットを楽しんでれば良いじゃない、と思います。

と言う感じでテザリングに関する料金とスペックのまとめでした。

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2011/8/25 10:00 · サービス解説 · (No comments)